※帰国時の住民税精算や、納税管理人の選任に関する実務的なアドバイスも承っております。
「元社員の住民税の督促状が会社に届いたんですが…」 退職した外国人エンジニアが母国へ帰った数ヶ月後、このようなトラブルに見舞われる企業が後を絶ちません。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか? 主な原因の一つは、日本の住民税が「後払い方式」であることが十分に理解されていない点にあります。
悪気なく税金を滞納したまま帰国させてしまうと、本人の未納税情報が入管審査で不利に考慮される可能性があり、将来の在留資格申請(再入国や永住権など)に影響することがあります。また、企業側にも説明不足など管理面での問題が指摘される可能性があります。
今回は、外国人雇用で最も注意すべき「住民税・所得税」の基本と、帰国時のトラブルを未然に防ぐ具体的な手続きについて解説します。
なぜトラブルが起きる?「住民税=後払い」の罠

まず、外国人社員に日本の税金の仕組みを理解してもらう必要があります。所得税と住民税には、徴収タイミングに決定的な違いがあります。
- 所得税(国税): 毎月の給与から概算額が天引きされ、年末調整または確定申告で年間税額が精算されます。
- 住民税(地方税): 前年1月〜12月の所得に基づいて税額が決まり、原則として翌年6月から翌年5月までの12回に分けて徴収されます。
多くの外国人は、給与から税金が引かれているのを見て「税金はすべて払っている」と思い込んでいます。しかし実際には、「今払っている住民税は去年の分であり、今年の働いた分に対する住民税は、来年払わなければならない」のです。
帰国タイミング別!退職時の徴収ルール

外国人社員が退職して帰国する場合、会社は「まだ払い終わっていない住民税(残税額)」を清算しなければなりません。退職時期によって手続きが異なります。
| 退職時期 | 徴収ルールと実務対応 |
|---|---|
| 6月〜12月 | 原則として普通徴収(本人納付)に切り替わるが、帰国時は納付が困難。本人の同意を得て、給与や退職金から「一括徴収」することを強く推奨。 |
| 1月〜5月 | 一括徴収が義務付けられています。 本人の同意の有無に関わらず、5月分までの未納税額を最後の給与等から差し引く必要があります。 |
「1月1日」をまたいで帰国する場合の落とし穴
1月1日時点で日本に住所がある場合、その直後に帰国しても新年度(前年所得分)の住民税の納税義務が発生します。この納付書は6月にならないと届かないため、後述する「納税管理人」の設定が必須です。
どうしても払いきれない時は?「納税管理人」制度

退職時の給与が少なく一括徴収しきれない場合や、1月以降に帰国する場合は「納税管理人」を選任します。
- 納税管理人とは: 本人に代わって納税通知書を受け取り、税金を納める代理人のこと。
- 選任の対象: 日本に住んでいる友人、同僚、または会社が引き受けることもあります。
帰国前に、本人が役所に「納税管理人申告書」を提出する必要があります。これを怠ると、滞納扱いとなり延滞金が発生するだけでなく、将来のビザ審査で致命的なマイナス評価を受けるリスクがあります。
よくある勘違い。「租税条約」はエンジニアにも適用される?

「友達は税金がかかっていないと言っていた」という主張をされることがありますが、ITエンジニアの場合は注意が必要です。
租税条約による免税は、主に短期滞在者、研究者、留学生などが対象です。一般的な国内企業と雇用契約を結ぶエンジニアの場合、基本的には日本人と同様に課税されます(中国など一部例外はありますが、要件は厳格です)。原則通り課税処理を行うのが、最も確実なコンプライアンス対策です。
まとめ:入社時と退職時の「説明」が最大のリスクヘッジ
住民税のトラブルを防ぐ唯一の方法は、「入社時に『後払い』の仕組みを説明し、退職時には『一括徴収』があることを同意させておく」ことです。
雇用契約書や就業規則に、「退職時に未払いの住民税がある場合は、給与または退職金から一括徴収する」旨を明記しておきましょう。 最後のお給料で揉めることがないよう、早めの情報共有が重要です。
円満な退職・帰国のサポートや、外国人雇用の税務コンプライアンスに関するご相談は、プロまでお気軽にお問合せください。





